「北海道にシロアリはいない」と思っている道民の方は多いですが、実は間違いです。昔から北海道にもシロアリは生息し、とくに近年は地球温暖化や住宅の断熱性能向上の影響から、生息エリアが拡大しています。
本記事では北海道でのシロアリ被害の状況に加え、早期発見のチェックポイント、予防法や駆除方法までお伝えします。


このような方におすすめ
- 北海道でのシロアリ被害の実態を詳しく知りたい方
- シロアリ被害のチェック方法を知りたい方
- 具体的なシロアリの予防方法を知りたい方
- 北海道でシロアリを発見したときの対処法を知りたい方
Contents
北海道でも発生するシロアリによる被害
北海道にもシロアリはいる
シロアリは木材を餌にする害虫で、世界中の熱帯・亜熱帯地域に多く生息します。
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高温・高湿度を好む昆虫で、条件だけ見れば北海道の気候にはマッチしないように思えますが、約100年前に現在の道南・北斗市周辺で発見された記録が残っています。
世界には約3000種類以上のシロアリがいますが、日本で主要な害虫とされているシロアリはヤマトシロアリ、イエシロアリ、ダイコクシロアリ、アメリカカンザイシロアリの4種類です。
そのうちヤマトシロアリは沖縄、九州、四国、本州だけでなく、北海道の道南、道央、一部の道北まで幅広く生息しています。
ヤマトシロアリは6°Cを越えると活動を始め、12°Cを上回ると活発になり、25°C〜30°Cで活動量がピークになります。6°C以下の気温だと活動量は減るものの、冬眠したり死滅したりはしません。
シロアリ被害が確認されている最北端は名寄市で、同市より南の地域ではすでにシロアリ被害が進行していてもおかしくないのです。

北海道各地のシロアリ目撃情報
具体的なシロアリの目撃情報について、北海道を4エリアに区分し、それぞれのエリアごとにまとめました。

札幌市・道央エリア
札幌市を中心とした道央エリアでは、シロアリ被害の報告がもっとも多く確認されています。札幌市内だけでもシロアリ被害に関する相談が年間数十件あり、実際の被害はそれ以上と推測されます。
旭川・道北エリア
2000年6月に旭川市内で初めてシロアリの生息が確認され、2001年には名寄市でも発見されました。それによって長らく生息の北限とされた地点が、一気に約100kmほど更新されました。
帯広・道東エリア
北海道のなかでもとくに地温が低く凍結深度の深いことから、道東エリアにシロアリはいないと思われていました。しかし2022年10月、帯広市内の住宅でヤマトシロアリが初めて発見され、その発見によって、シロアリは道内のどこに生息していても不思議ではないと考えられるようになりました。
道南エリア
道南エリアでは古くからシロアリの生息が確認されており、約100年前に北斗市の茂辺地でヤマトシロアリが発見されています。 道央と並んでシロアリ被害が報告されている主要地域のひとつです。
シロアリの被害範囲は今後さらに拡大する可能性がある
現在、世界中で温暖化が進んでいます。気象庁の発表によると、日本の平均気温は過去30年で1.48℃上昇しているとのことです。
気温が上がることで生態系に変化が起こり、あらゆる生物の活動範囲は変わる可能性があります。シロアリについても、これまで寒すぎて活動できなかった範囲へも生息地が広がる可能性があります。
したがって、シロアリ被害がない地域に住んでいるからといって安心はできません。大切な住宅を守るために、シロアリについて学んでおきましょう。
シロアリは住宅に深刻な被害をもたらす

シロアリによる建物被害は深刻な問題です。侵食された木材の耐久力は大きく低下します。
ある強度試験によると、シロアリによる侵食で断面が16%減少した木材は、圧縮強度と曲げ強度が約半分にまで低下しました。見た目上たいしたことがないからといって放置するのは大変危険です。
とくに北海道では積雪による建物への負荷が大きく、それを支える柱や壁の強度が弱まると、雪の重みで住宅が倒壊してしまうリスクもあります。
2018年9月の北海道胆振東部地震では、倒壊した厚真町やむかわ町の木造建築物にシロアリの侵食が確認されました。
他にも、大地震で倒壊した建物を調査した結果、シロアリによる被害にあっており、建物の耐震強度が落ちていたケースは多いです。
参考
『北海道住宅新聞』北海道住宅新聞社 2019年6月15日
シロアリの被害にあったからといって、建て替えまで必要なケースはほとんどなく、多くの場合は被害箇所の補修・補強で済みます。修繕・リフォームにかかる費用は被害内容によって変わりますが、大まかな相場感は以下の通りです。
| 補修場所(1箇所あたり) | 相場 |
| 床下の補強(腐食した木材の交換など) | 20~50万円程度 |
| 柱の補強 | 10~50万円程度 |
| 床材の張り替え | 100〜200万円程度 |
| 柱の交換 | 100~200万円程度 |
| 建物基礎部分の補強 | 200万円以上 |
| 屋根や梁の修繕 | 200万円以上 |
多少お金がかかってもシロアリ被害が軽微なうちに駆除や対策をしておけば、大規模な修繕・リフォームが不要になり、結果的にトータルの支出を抑えられます。
北海道でシロアリ被害にあいやすい基礎断熱住宅
北海道では基礎断熱住宅が増えています。床下がコンクリートなどで塞がれるため、シロアリ被害を防げると思われがちですが、実はその認識は間違いです。詳しく解説します。
基礎断熱住宅とは
基礎断熱住宅とは、住宅の土台となる基礎部分に断熱材を施した住宅のことです。断熱性・気密性を高めることで、夏は涼しく冬は暖かく、安定した快適な室温を保てます。
日本国内ではエネルギー効率のよい住まいとして近年人気で、とくに北海道では高い断熱性から導入住宅が増えています。

北海道で増える基礎断熱住宅のシロアリ被害
北海道にて長年事業を営むシロアリ駆除業者によると、過去10年間の駆除件数に占める基礎断熱住宅の割合は変化しています。2009〜2013年が平均で19.2%だったのに対し、2014〜2018年は同45.2%と2倍以上に増えている状況です。
シロアリがエネルギー源にするのは木材ですが、邪魔な断熱材は食い破って穴を空けます。基礎断熱が施された空間は外と比べて暖かく、シロアリにとって好ましい環境です。一度侵入を許すとそこから被害が拡大しやすい特徴があります。
基礎断熱住宅にお住まいの方も、シロアリへの警戒を怠らないようお気をつけください。

北海道に生息するヤマトシロアリの生態
日本で主要な害虫とされているシロアリのうち、北海道で被害が確認されているのはヤマトシロアリ一種類です。同種類の生態について詳しく解説します。
分布|生息地の北限は名寄周辺
北海道北部をのぞく、日本全土で生息が確認されています。

ヤマトシロアリの見た目の特徴
| シロアリ | クロアリ | |
| 職アリ
(働きアリ) |
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| 羽アリ | ![]() |
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ヤマトシロアリの触角は数珠状で、胸部と腹部はほぼ同じ幅でくびれがありません。土や木の中で生活することが多いため目はありません。一方、普通のアリの触覚は「く」の字状で、腹部が大きくくびれており、目もあります。
羽アリ同士を比較すると、ヤマトシロアリは前羽と後羽がほぼ同じ形・大きさなのに対し、普通のアリの羽は前羽が後羽よりも大きく、太い線が入っています。
ヤマトシロアリが住宅にもたらす被害
ヤマトシロアリは生息範囲が広く、日本のシロアリ被害の90%以上を占める、日本国内ではもっとも一般的な種類です。
イエシロアリ同様、硬い高密度の木材より、軟らかい低密度の木材を好んで食べる傾向があります。とくに被害が大きいのは、マツ、モミ、セン、ホワイトウッド、ブナです。
ヤマトシロアリは乾燥に弱く、1日水が接種できないだけで正常な活動が難しくなります。
被害にあう場所は、湿っているか水場の近くにある傾向があり、結露や水漏れによって水が供給される場合、住宅全体に被害がおよぶ可能性があります。
一昔前までは風呂場、洗面所、台所の水回りに集中して被害が発生していました。しかし最近は個体数の増加に伴って、玄関部分や土台部分の被害率も高くなってきており、床下に放置された資材に被害が出ることも多いです。
北海道でシロアリを早期発見するための5つのチェックポイント
早期にシロアリを見つけることが、被害を抑える一番の対策です。確認すべき重要なポイントをご紹介します。
チェック項目①|蟻道がないか
シロアリが移動用につくる構造物を「蟻道(ぎどう)」と呼びます。土・木屑・糞を組み合わせた半円筒形の通路で、餌場と巣を結ぶ役割をはたします。

主な場所は下記です。
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見つけた場合は破壊せず、写真に収めてから速やかに専門業者へ連絡してください。
チェック項目②|羽や羽アリの死骸は落ちていないか
シロアリは「群飛(ぐんぴ)」という行動で生息範囲を広げます。群飛とは、新天地を求めて羽アリが集団移動する現象で、巣が成熟したり近隣の餌が枯渇した際に発生します。
北海道においては、ゴールデンウィークから6月にかけて群飛が観察されるため、この時期は窓辺・ベランダ・玄関付近に見慣れない虫がいないか要注意です。
羽アリの死骸がないか確認しましょう。また、着陸後すぐに羽を切り離すため、羽だけが散乱していることもあります。
移動後の羽アリは付近で巣をつくり始めるので、痕跡を発見次第、駆除の専門家に相談が必要です。

チェック項目③|木材に小さな穴や崩れはないか
床材や支柱に小さな穴や劣化がないかを点検します。
駆除業者は「打診」という診断方法を使います。柱を指先で軽く叩いて、返ってきた響きから木材の状態を推測するのです。
健全な木材は内が詰まっているため、叩くと鈍く重たい響きがあります。対して、シロアリに侵食された材木は中がスカスカになるため、軽く高い音が返ってきます。
駆除業者以外の人に正確な判別は難しいため、疑わしい際は業者の診断を仰ぎましょう。

チェック項目④|床や畳がきしむ・沈む感覚はないか
食害を受けた床材は弾力性が失われ、歩くとふわふわとした感触になります。
畳の内部に使われる藁もシロアリの餌になるため、不自然なやわらかさを感じた場合は、畳を持ち上げて裏面や床板を観察してください。
シロアリや蟻道を発見したなら、即座に駆除業者へ連絡をしてください。畳以外の箇所にも被害が拡散している可能性があります。

チェック項目⑤|庭の木製構造物にシロアリの痕跡がないか
屋内だけでなく、庭や車庫などの屋外設置物も定期チェックが欠かせません。
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屋外の木材を食べ尽くしたシロアリは、次の餌を求めて住宅内部へ侵入する可能性があります。異常を感じたら放置せずシロアリ駆除業者に相談をしてください。
北海道で有効なシロアリ予防法
シロアリ被害を未然に防ぐには、シロアリから狙われにくい環境を整えることが大切です。効果的な対策を紹介します。
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ただし、すでにシロアリが棲みついている状況では予防をしても被害は防げません。駆除を優先し、シロアリがいなくなったことを確認した後で予防をしてください。
床下点検口をつける
床下点検口は、床下空間と住宅をつなぐ開口部のことです。設置に法的義務はなく、未設置の住宅も多いです。
シロアリは床下から建物の基礎を伝って家の中に入り込んでくるケースが多いため、床下の状態を定期的にチェックすれば、早期段階でシロアリの兆候を発見し、損害を最小限に食い止められます。
新築時の設置が望ましいですが、リフォームで後付けすることも可能です。駆除業者の中には点検口施工を請け負う会社もあるので、診断とあわせて問い合わせてみましょう。工事費は3万〜5万円程度が相場です。

除湿の徹底で床下の湿度を下げる
シロアリが活動しやすい湿度帯は70〜80%です。これを下回ることで、被害リスクを下げられます。具体的な対策方法は以下です。
床下換気口の周辺が物で塞がれていないか確認

湿気を外に飛ばすための床下換気扇の設置

地面からの湿気を遮断するための防湿シートの敷設

また、室内の湿度を下げるために、除湿機・エアコンのドライ機能を活用しましょう。
住宅基礎部分のひび割れを点検
建物の基礎をチェックし、シロアリが侵入可能な亀裂はないか調べましょう。
亀裂の発生要因には、乾燥収縮・温度変動・地震などがあります。0.5mm以上の幅があれば、シロアリは通り抜けられると言われており、小さなひび割れでも油断は禁物です。
修繕をするには、外壁専門業者へ依頼するのが確実です。応急処置として、市販の基礎補修材で一時的に対応する方法もあります。

配管周りの隙間を点検
水道やガスなどの配管が外壁・基礎を貫通している箇所に隙間があると、基礎の亀裂と同じくシロアリの通路になります。隙間発見時は外壁専門業者へ依頼しましょう。
応急措置としてシーリング材を使う手もありますが、材料の組み合わせ次第では配管を傷めることがあります。とくにポリウレタン系シーリング材は塩ビ管を劣化させる恐れがあり、使用には注意が必要です。

住宅周辺の環境整備で侵入経路を断つ
シロアリはセルロースを栄養源とします。建物付近に餌となる物を置かないことで、標的にされにくくなります。
とくに注意すべきものは以下です。
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薬液散布で床下にバリアを貼る
シロアリの侵入阻止を目的として、駆除業者がもっともよく使う工法は「バリア工法」です。
床下全体に専用薬剤を塗布することで、地中のシロアリを駆除しつつ、新たな個体の侵入を防ぐ防護層(バリア層)を形成します。

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北海道でシロアリを発見したときの対処法
もし住宅内でシロアリを見つけた際は、冷静に行動して被害拡大を防ぐことが肝心です。具体的な対応手順を説明します。
室内でシロアリを発見したときの応急処置
掃除機で吸引
もっとも簡単な方法は掃除機で吸い取ってしまうことです。シロアリは脆弱な生物で、吸引されればほぼ確実に死亡します。念のため、吸引後はゴミ袋を密閉して廃棄しましょう。
掃除機が使えない場所では、粘着テープ・粘着ローラーも代替手段として有効です。
発生場所の記録
スマートフォンでシロアリの姿とその発生場所を撮影しておくと、後で専門家に相談する際の貴重な情報源になります。
シロアリ発見時にやってはいけないNG行動
市販の殺虫スプレーは根本的な解決にはなりません。なるべく使用は避けましょう。
市販殺虫剤は根本解決につながらないため、できるだけ使用を控えましょう。
殺虫剤を使えば目の前の個体は駆除できますが、残りのシロアリが危険を感じて奥深くに逃げ込み、被害範囲が広がったり発見が困難になったりします。
シロアリ発見時は刺激を最小限にし、速やかに処理することが重要です。
巣ごと根絶する方法
主な駆除方法はバリア工法とベイト工法で、どちらも高度な技術を要するため、DIYではなく業者への依頼を推奨します。
バリア工法は、床下にシロアリ駆除・予防用の薬剤を広範囲に散布する施工方法です。地中に潜むシロアリを殺虫しつつ、新しいシロアリの侵入を阻む防護層(バリア層)を構築します。
ベイト工法は、地中に毒餌(ベイト剤)を配置し、シロアリに巣へ運ばせることで、コロニー全体の根絶を目指す手法です。「床下空間がない」などの理由でバリア工法が適用できない住宅で採用されることが多いです。

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まとめ
北海道にもシロアリは生息しています。シロアリの羽アリの発生は一般的に5月末頃から6月にかけて見られるため、この時期はとくに注意深く羽アリの痕跡がないかチェックしてください。
早期発見のためには、蟻道や羽アリの痕跡を探すのが有効です。
また、シロアリ被害にあいにくい環境づくりが重要で、床下点検口の設置、湿度を下げる、侵入経路を塞ぐなどの対策が有効です。
少しでも「シロアリがいるかも」と不安な方は、迷わずシロアリ駆除業者に相談しましょう。早期発見・早期対応が大切な住宅を守る一番の方法です。シロアリお助け本舗では無料相談を受け付けておりますので、お気軽にご利用ください。




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