この記事の監修者
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「家とあなたを護る。」害虫・害獣駆除から雨漏り・大規模リフォームまで。一級建築士事務所ならではのワンストップサービスで、大切な家とお客さまの健康を守ります。害虫・害獣駆除、総合リフォーム、外壁の塗装や屋根の葺き替え、雨漏り工事、建築・土木工事に災害復旧工事などワンストップサービスで施工。シロアリの駆除歴15年、対応件数累計18,000件の豊富な実績があり、経験豊富なスタッフがお客様のニーズに合わせて、害虫駆除いたします。
ROY株式会社 |
ベイト工法とはシロアリ駆除・予防のための施工方法の一つです。
薬剤を散布するシロアリ駆除の一般的な方法とは違い、毒餌(ベイト剤)を使うことが大きな特徴です。
本記事では、ベイト工法の仕組み、メリット・デメリット、他の工法との違いを詳しく解説します。
また、「できるだけ駆除業者に頼まずにやってみたい」と考えている方向けに、DIYの方法も紹介しています。
シロアリ被害に悩まれている方や、ベイト工法の詳細を知りたい方はぜひ参考にしてください。
このような方におすすめ
- ベイト工法について詳しく知りたい方
- 自宅に最適なシロアリ駆除方法を探している方
Contents
ベイト工法とは
まず始めに、公益社団法人日本シロアリ対策協会が発行する「維持管理型シロアリ防除工法標準仕様書」に基づき、ベイト工法の詳しい仕組みや他の工法との違いを解説します。
ベイト工法の仕組み
ベイト工法とは、地中にベイト剤と呼ばれる毒餌を仕込み、それをシロアリに持ち帰らせることで、巣そのものの根絶を狙うシロアリ駆除の方法です。
ベイト(bait)は「餌」という意味があり、そこから名前がつけられています。
近年生まれた駆除方法の一つで、日本では平成14年4月に日本シロアリ対策協会が標準の工法として定めました。
ベイト工法に使う道具は大きく3つです。
ベイト工法に使う道具
- ベイト剤
- 容器(ステーション)
- 餌木
ベイト剤・・・殺虫成分を混ぜた毒餌のこと。シロアリに持ち帰ってもらうため、殺虫剤と違って遅効性の毒が使われています。シロアリにとっては毒でも、人間にとってはほとんど無害な成分です。
容器(ステーション)・・・ベイト剤や餌木を入れて、地中に埋めて使います。シロアリが侵入しやすいよう、全体に適度な隙間があります。
餌木・・・シロアリの餌となる木材のこと。シロアリをおびき寄せるために使います。
シロアリは冬でも冬眠せず活動を続けるため、ベイト工法は季節問わず年中有効です。
とはいえ、気温の高い方がより活発に活動するため、春〜夏にかけてはベイト剤への食いつきがよくなり、効率良い駆除が期待できます。
ベイト剤に含まれる殺蟻成分
ベイト剤がシロアリを巣ごと駆除できるのは、昆虫の脱皮を阻害する成分をうまく活用しているからです。
その性質から脱皮阻害剤(IGR剤)とも呼ばれ、食べたシロアリは、次の脱皮がうまくいかず死に至ります。
シロアリは数日から数週間おきに脱皮をしながら大きくなる生物で、ベイト剤を食べたシロアリは長くても数週間後には死んでしまうことになります。
巣の中に必ず1匹はいる女王アリや王アリは脱皮をしないので、直接ベイト剤によって死ぬことはありませんが、餌を届けてくれる職アリ(働きアリ)がいなくなることで、餓死します。
ベイト剤は他の薬剤のように、シロアリが触れた瞬間に効果が出るものではありません。
だからこそ、巣に持ち帰らせ、シロアリの巣全体に大きなダメージを与えられるのです。
ベイト剤は脱皮をして成長するゴキブリにも効果があります。しかし、シロアリ用のベイト剤はゴキブリの巣を根絶するほどの力はありません。
含有する成分量も、餌の種類もシロアリに特化してつくられているからです。
ゴキブリ駆除の場合は、ゴキブリ専用のベイト剤購入をオススメします。
効果のあるアリの種類
ベイト工法が効果のあるシロアリは、ヤマトシロアリとイエシロアリの2種類です。
シロアリ被害の90%以上は、この2種類のシロアリだと言われています。
日本には他のシロアリも生息しますが、ベイト工法による効果が実証されていません(2025年7月時点)。
シロアリの防除施工をおこなう技術者の資格「しろあり防除施工士」でも、2種類以外でのベイト工法は非推奨とされています。
ヤマトシロアリ |
イエシロアリ |
|
見た目 職アリ (働きアリ) |
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見た目 羽アリ |
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分布 |
北海道北部をのぞく、日本全土(北限は北海道名寄市) |
千葉県以西の海岸線に沿った温暖な地域と小笠原諸島 |
体長 |
4.5〜7.5mm |
7.4〜9.4mm |
巣の中の個体数 |
2~3万匹 |
50~100万匹 |
特徴 |
・生息範囲が広く、シロアリの中でもっとも被害件数が多い種類 ・巣内の個体数はイエシロアリよりも少なく、10,000~30,000匹程度 ・暗く湿気がある場所を好むため、床下や浴室で巣が見つかることが多い |
・世界のシロアリの内でももっとも被害をもたらす種で、「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている ・巣のサイズは大きいもので直径1mにおよび、個体数は100万匹に達することもある |
バリア工法との違い
シロアリ駆除・予防工事のなかで、もっとも一般的な施工方法がバリア工法です。
バリア工法は俗称であり、駆除業者の間では液剤工法、液剤施工、液剤処理法とも呼ばれます。
住宅の床下に液状の薬剤を散布することで、すでに侵入しているシロアリの駆除と同時に、シロアリが新しく侵入できない土壌(バリア層)をつくる施工法です。
ベイト工法が普及するまでは、シロアリ駆除・予防はバリア工法が一般的でした。
しかし床下全面がコンクリートで覆われているなど、土壌に薬剤を散布できない家屋が増えており、ベイト工法が採用される件数が増えています。
他にも、「薬剤過敏症で薬が撒けない」「床下への出入りでホコリが気になる」などの理由で、ベイト工法を選ぶ方もいます。
ベイト工法 |
バリア工法 |
|
仕組み |
家の周辺にベイト剤(毒餌)を設置し、シロアリに巣に持ち帰らせる |
床下の土壌に薬剤を散布し、シロアリが侵入できない層(バリア)をつくる |
施工箇所 |
・建物の外周 ・とくに被害の多い被害箇所 |
主に床下で、建物の構造によっては、玄関、風呂場など |
使用する薬剤 |
・脱皮阻害剤(IGR剤) |
・液状薬剤 (日本しろあり対策協会の指定薬剤は全部で26種類) |
効果 |
・シロアリを巣ごと根絶する |
・薬剤に触れたシロアリを駆除する ・シロアリの侵入を防ぐ |
持続性 |
1年間 |
5年間 |
即効性 |
施工から1〜2ヶ月程度で効果が現れる |
施工後すぐに効果が現れる |
安全性 |
高い |
高いが、化学物質過敏症の場合は注意 |
通常は、バリア工法とベイト工法は併用しません。
バリア工法の施工ができない家の、第二の選択肢としてベイト工法がおこなわれるケースが多いです。
ただし、庭の切り株や木製の柵など、すでにシロアリ被害にあっている特定の場所がある場合、被害場所の近くにベイト剤を設置することもあります。
ベイト工法のメリット
ベイト工法のメリット
- 人やペットの健康への影響が少ない
- ニオイがしない
- 床下のホコリが家の中に入ってこない
- 室内工事が不要で、普段どおり生活できる
人やペットの健康への影響が少ない
ベイト工法に使われる薬剤は、脱皮阻害剤(IGR剤)と呼ばれ、昆虫の脱皮を妨げる効果があります。
人やその他哺乳類への影響は少なく、妊婦、赤ちゃん、ご高齢の方など、免疫力の低い人や、アレルギー体質、シックハウス症候群、化学物質過敏症の方でも気兼ねなく利用できます。
ニオイがしない
ベイト剤に使われる薬剤成分(クロルフルアズロン、ビストリフルロン、ノバフルムロン)は、いずれも無臭です。
また、いずれの薬剤も揮発性が非常に低いので、土の中に埋めた容器から、地上まで成分が飛散することはありません。
床下のホコリが家の中に入ってこない
バリア工法の場合、薬剤を床下に散布する都合上、床下と家の中とを行き来する必要があります。
シロアリ駆除業者は、床下への入口周辺をビニールで囲み、ホコリ、薬剤、臭いが室内に侵入しないよう作業をおこないます。
しかし、対策がされていても、アレルギー体質やシックハウス症候群の場合、体調に影響がある可能性もゼロではありません。
ベイト工法であれば、床下への行き来は必要なく、駆除業者が家の中に入ることも不要です。
そのため、床下からホコリ、カビ、臭いなどが上がる心配もありません。
室内工事が不要で、普段どおり生活できる
バリア工法の場合、家の接する土壌部分に満遍なく薬剤を散布することが必要で、家の構造によっては穴をあけて薬剤を注入するケースもあります。
たとえば、玄関や勝手口でドア枠の木材がコンクリートやタイル面に埋まっている場合、木材の根元に穴をあけ、薬剤を注入することが必要です。
ベイト工法の場合、家の中での工事は不要で、家のものには一切触れずに工事を終えられます。
ベイト工法のデメリット
ベイト工法のデメリット
- 効果が出るまでに時間がかかる
- 他の工法と比較して費用が高い
- 最低でも年1回の定期点検が必要
- 敷地が狭いと施工が難しい
効果が出るまでに時間がかかる
ベイト工法は「シロアリがベイト剤を発見」「巣内にベイト剤がいきわたる」「薬剤の効果でシロアリが死ぬ」とそれぞれの行程に時間がかかります。
とくに最初の「シロアリがベイト剤を発見」に時間のかかるケースが多く、最低でも1〜2ヶ月、場合によっては数ヶ月から半年程度が必要です。
一方でバリア工法の場合は、床下への薬剤散布が終わるとその日からシロアリの侵入を防げるようになります。
一刻も早くシロアリ被害に対処したい場合、ベイト工法はオススメできません。
他の工法と比較して費用が高い
費用の算出方法は工法ごとに変わり、明確な比較は難しいですが、ベイト工法は他の工法と比べて割高な傾向があります。
一般的な住宅の広さである20〜40坪の場合、施工費用の相場は以下です。
床面積 |
ベイト工法 |
バリア工法 |
20坪 |
186,000~240,000円 |
99,000~166,000円 |
30坪 |
279,000~360,000円 |
130,000~249,000円 |
40坪 |
372,000~480,000円 |
174,000~332,000円 |
ベイト工法の場合は埋め込む容器の数で費用が変わり、バリア工法の場合は1階床面積の大きさで費用が変わります。
住宅の構造や形状によっても費用は増減するので、上記相場は目安としてお考えください。
最低でも年1回の定期点検が必要
ベイト工法は一度実施して終わりではなく、経過観察が必要な施工方法です。
施工開始直後はベイト剤にシロアリが食いついているかを定期的に確認し、シロアリが食いついてからはベイト剤の残量確認と補充が必要です。
一度施工すると5年間追加メンテナンスなしでも効果が持続するバリア工法に対して、ベイト工法は手間のかかる工法と言えるでしょう。
敷地が狭いと施工が難しい
ベイト工法は、建物の周りをぐるっと取り囲むように専用容器を埋める必要があり、「庭がない」「道路ギリギリに建てられている」などの理由で、容器を埋めるスペースがない場合は施工が難しくなります。
また、敷地全体がコンクリートで覆われている場合、コンクリートに穴をあける工事が必要となり、そのぶん一箇所ごとに追加の工事費費用がかかります。
ベイト工法がオススメの家
ヤマトシロアリかイエシロアリがターゲットの場合
繰り返しですが、ベイト工法はヤマトシロアリとイエシロアリの2種類に対してもっとも効果を発揮する施工方法です。
このどちらかのシロアリが出現した場合に限り、ベイト工法を検討しましょう。
ヤマトシロアリ |
イエシロアリ |
|
見た目 職アリ (働きアリ) |
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見た目 羽アリ |
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健康への影響が気になる家
ベイト工法で使われる薬剤(ベイト剤)は人体への有害性が少なく、薬液を散布する工法と比べると安全性が高いことが特徴です。
また、床下に入る必要もないためホコリ、カビ、臭いなどが屋内に侵入してくるリスクもありません。
妊婦、乳幼児、ご高齢の方など、免疫力が低い方のいるご家庭、アレルギー体質、シックハウス症候群、化学物質過敏症の方がいる場合でも気兼ねなく実施できます。
床高が低い、もしくは床下がない家
ベイト工法は、バリア工法と違って床下への薬剤散布が必要ないため、床下にスペースのない家でも施工可能です。
基礎がコンクリートで覆われている家であっても、関係なく工事ができます。薬剤を注入するための穴を玄関や柱に空ける必要もありません。
ベイト工法の種類
各駆除業者が実施するベイト工法は、基本的なシステムに大きな違いはありませんが、使う薬剤と容器が異なります。
容器の種類
主に5種類の容器が使われており、それぞれの名称と特徴は下記の通りです。
サブステック
出典:環境機器株式会社
サブステックの特徴
・日本の住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社が開発
・主に日本国内のシロアリ駆除に用いられる
・同じ形で一回り小さい『サブステックステーションミニ』を使うシロアリ駆除業者も多い
アゴラトラップ
アゴラトラップの特徴
・日本の株式会社友清白蟻が開発
・主に日本国内のシロアリ駆除に用いられる
・容器のみの販売はおこなわれていない
エクステラ
エクステラの特徴
・アメリカのENSYSTEX社が開発
・環境基準の厳しいオーストラリアをはじめ、世界中で使われている
・餌木つき、15セットで46,200円(税込)、ベイト剤まで含めて88,000円(税込)で市販されている
セントリコン・ステーション
セントリコン・ステーションの特徴
・アメリカのCorteva Agriscience社が開発
・米国環境省 「環境栄誉賞」受賞、国土交通省 品確法 特別評価方法認定で環境への負荷の少なさが評価されている
・容器のみの販売はおこなわれていない
RTIステーション
RTIステーションの特徴
・アメリカのCorteva Agriscience社が開発
・セントリコンシリーズの最新製品
・セントリコン・ステーションから改良を重ね、より効率的に駆除ができる形へと進化した
・容器のみの販売はおこなわれていない
薬剤に含まれる成分の種類
ベイト剤に含まれる、シロアリ駆除のための成分は全部で3種類です。いずれも人体への毒性は低く、毒性を表す指標の一つであるLD50(※)は食塩を下回ります。
大量摂取や長期間摂取をしなければ健康への影響はほとんどありません。
参考
『防除薬剤等の現況 令和6年10月版』公益社団法人日本シロアリ対策協会
※LD50:物質を実験動物に投与した際、その動物の半数が死亡すると予想される量のこと。主に化学物質の急性毒性の強さを示す指標として用いられる。
ノバフルムロン
ノバフルムロンの特徴
・白色粉末
・容器「RTIステーション」と合わせて使われる薬剤「リクルートHD」に含まれる
・哺乳類に対する毒性が非常に低く、目や皮膚に対する刺激性も低い
ビストリフルロン
ビストリフルロンの特徴
・白色粉末
・市販のベイト剤「シロアリハンター」(イカリ消毒株式会社)に含まれる
・難揮発性であり、住民が空気中から吸い込む可能性はない
クロルフルアズロン
クロルフルアズロンの特徴
・白色粉末
・個人でも購入可能なベイト剤「レクイエム」(株式会社イーライフ)に含まれる
・難揮発性であり、住民が空気中から吸い込む可能性はない
ベイト工法の施工にかかる費用
ベイト工法の施工費用は外周の長さで決まる
ベイト工法の施工費用は、一般的に以下の計算式で求められます。
(建物の外周の長さ)×(1mあたりの単価)=(ベイト工法の施工費用) |
厳密には、埋め込む容器の数で費用は決まりますが、容器を埋める間隔は各ベイト剤によって異なるため、外周の長さとベイト剤の有効範囲に応じて必要な容器の数を計算します。
シロアリ駆除業者は、現場に適したベイト剤の埋め込み間隔や値段、一箇所あたりの工事費用などを加味し、「1mあたりの単価」を設定することが一般的です。
設置費用とメンテナンス費用にわかれる
ベイト工法は一度施工して終わりではなく、定期点検やベイト剤の補充が必要な工法です。
そのため、施工開始時に必要な設置費用に加えて、定期点検やベイト剤補充時に必要なメンテナンス費用も発生します。
設置費用には、一般的に以下の代金が含まれます。
- 事前調査および施工計画の作成
- 容器の設置
- シロアリが食いつくまでの定期点検(1〜2ヶ月ごと)
多くのシロアリ駆除業者は、施工開始から1年間は追加費用なしで定期点検をおこなってくれます。
シロアリがベイト剤に食いついた後は、メンテナンス期間に入ります。
シロアリ駆除業者は埋めている容器の中身を確認し、「シロアリがベイト剤を食べているか」「ベイト剤は足りているか」などをチェックします。
それぞれの費用相場は以下の通りです。
設置費用 |
3,000円〜5,000円/m |
メンテナンス費用 |
1500円/m(年一回)程度 |
仮に外周50mの住宅の場合、初年度は150,000円〜250,000円、次年度以降は約75,000円ほどかかる計算になります。
なお、メンテナンス時、容器(ステーション)が破損してる場合は別途で容器(ステーション)の費用もかかる可能性があります。
また、容器の埋め込みが必要な箇所にコンクリートが敷かれている場合、専用機械による穴あけ(コア抜き)が必要です。
穴あけ作業の費用相場は、1箇所あたり15,000円〜18,000円です。
シロアリ駆除業者によるベイト工法の手順
シロアリ駆除業者によるベイト工法の手順
手順1)事前調査をおこない、施工計画書を作成する
手順2)餌木を入れた容器の設置
手順3)定期的に点検をおこない、容器内のシロアリの様子を確認する
手順4)ベイト剤を投与する
手順1)事前調査をおこない、施工計画書を作成する
依頼を受けたシロアリ駆除業者は実際に該当の建物に行き、シロアリの被害状況や建物の構造などをチェックして有効な駆除方法を検討します。
以下は調査項目の一部です。
- 対象とする建築物の構造
- 対象とする建築物の周囲、敷地内の状況
- シロアリによる被害のある場所および被害実態
- 周辺の植生・材木・廃材等
手順2)餌木を入れた容器の設置
建築物の周囲をぐるっと取り囲むように容器を埋め込み、中に餌木を入れます。
設置間隔は使用するベイト剤によって変わり、すでにシロアリが出没している場所、シロアリが発生しやすい場所(水回りや日当たりの悪い場所など)には多めに設置します。
手順3)定期的に点検をおこない、容器内のシロアリの様子を確認する
餌木の設置から1〜2ヶ月ごとに、シロアリが食いついているのか確認をします。
シロアリが餌に食いつくまでにかかる時間は各場所ごとにバラバラです。短いときで1ヶ月、長いときで半年ほどかかるケースもあります。
もし、半年以上経ってもシロアリが食いつかない場合、設置場所の見直しや餌木の変更をおこないます。
手順4)ベイト剤を投与する
餌木にシロアリが食いついた後は餌木を取り除き、代わりにベイト剤を挿入します。
ベイト剤挿入後は、半年〜1年に一回ペースで状況を確認をおこない、必要に応じてベイト剤の補充をおこないます。
ベイト剤が食べられなくなってからも観察は必要です。1年ほど経ってもベイト剤周辺にシロアリが出没しなくなれば、周辺の巣は根絶されたと見なします。
容器を回収し、空いた穴を塞ぐなど現状復帰をおこなって、駆除完了となります。
ベイト工法をDIYする方法
ベイト工法に必要な道具や薬剤はネット販売もされており、個人でも施工可能です。具体的な手順と準備物について解説します。
ベイト工法をDIYする手順
手順1)家の周りを確認し、ベイト剤が埋められる土壌であることを確かめる
手順2)ベイト剤の必要数を計算してから購入する
手順3)ベイト剤を家の周りに埋める
手順4)1〜2ヶ月後、ベイト剤の周りにシロアリが集まっているかを確認する
手順5)各ベイト剤の有効期間に従って回収・交換をおこなう
手順1)家の周りを確認し、ベイト剤が埋められる土壌であることを確かめる
ベイト工法は家の周りをぐるっと取り囲むようにベイト剤を埋める必要があります。
「ベイト剤を埋められるだけのスペースがあるか」「コンクリートで覆われていないか」などを確認しましょう。
ベイト剤を埋められない場所がある場合、そこからシロアリの侵入を許してしまう可能性があります。不安な場合は、シロアリ駆除業者に依頼をしましょう。
手順2)ベイト剤の必要数を計算してから購入する
多くの市販のベイト剤は1〜2m間隔での設置を推奨しています。
家の外周の長さを計測し、ベイト剤の推奨設置間隔で割ることで、ベイト剤の必要個数を割り出しましょう。
(建物の外周の長さ)/(ベイト剤の推奨設置間隔)=必要なベイト剤の数 |
市販のベイト剤の場合、容器とベイト剤が一体になっているものが多いです。
別々に購入することもできますが、専門知識がなければ薬剤量の調整は難しいため、一体型のベイト剤を買うのがオススメです。
また、穴掘り作業に備えて軍手、スコップ、汚れてもいい服なども用意しましょう。
手順3)ベイト剤を家の周りに埋める
購入したベイト剤を、推奨間隔に合わせて埋めましょう。
ベイト剤の毒性は非常に少ないですが、念の為軍手を用意して直接触ることは避けてください。
また、乳幼児やペットがいるご家庭は作業場所に近づかないよう十分に確認しながら作業を進めましょう。
万が一、ベイト剤を飲み込んでしまった場合は、すぐに医師に相談をしてください。
手順4)1〜2ヶ月後、ベイト剤の周りにシロアリが集まっているかを確認する
購入したベイト剤によって推奨されている方法で、シロアリがベイト剤に食いついているかどうかを確認しましょう。
メーカーによって、容器を一度引き抜くタイプや、容器の蓋をあけて中身を確認するタイプがあります。
シロアリは臆病な性格のため、刺激を与えると逃亡する恐れがあります。
そのため、ベイト剤の確認は慎重におこない、なるべくシロアリを刺激しないよう気をつけましょう。
半年経ってもシロアリが食いつかない場合「ベイト剤の設置場所を変える」「ベイト剤を違うものに変える」など検討しましょう。
手順5)各ベイト剤の有効期間に従って回収・交換をおこなう
シロアリが食いついてからは、使用するベイト剤の推奨期間ごとに容器内の確認とベイト剤の補充をしましょう。
最初に集まっていたシロアリが、確認できなくなれば駆除終了のサインです。
駆除終了後も新しい巣が生まれ、シロアリ被害が再発する可能性もあります。
シロアリへの警戒は怠らないように注意してください。
プロによる施工とDIYの比較
使用するベイト剤の強さ
容器と薬剤が一体となっているような市販のベイト剤は、シロアリ駆除業者が使っているベイト剤の有効成分と同じですが、濃度に差があり、効果は弱くなります。
一般的には3~10倍の濃度差があります。
巨大な巣を駆除する場合、時間がかかったり、最後まで駆除しきれなかったりする恐れがあります。
気になる方はベイト剤を多めに用意し、こまめに入れ替えるようにしてください。
通販サイトで購入できる業務用ベイト剤もありますが、「容器が別売りである」「自分で量の調整をおこなわなければならない」ものが多いため注意してください。
薬剤によっては水に混ぜるなどの調合も必要です。
購入前に使用方法をよく確認し、自分にできそうか確かめるようにしましょう。
駆除にかかる費用
ベイト剤の設置1箇所あたりにかかる費用は、DIYの方が安く、経済的です。
シロアリ駆除業者による施工 |
DIY |
|
1箇所あたりの設置費用 |
3,000円〜5,000円 |
400円~600円 |
一般的な住宅の敷地面積約30坪、外周40mの場合、以下のような費用差になります。
シロアリ駆除業者による施工 |
DIY |
|
初期設置 |
120,000円〜200,000円 |
16,000円〜24,000円 |
2回目以降の設置 |
40,000円〜60,000円 |
16,000円〜24,000円 (初期設置費用と同じ) |
DIYの方が安くすむ一方、調査や穴掘りなどの手間や時間がかかります。また、シロアリ駆除業者への依頼の場合、専門家によるシロアリ被害調査も含まれることが一般的です。どちらがいいか、値段だけ見て決めるのではなく総合的に判断しましょう。
ベイト剤の効果的な置き場所の選定
シロアリ駆除業者による施工では湿度、温度、周辺環境などを考慮し、シロアリが食いつきやすい場所にベイト剤を設置します。
専門知識のない人と比べると、食いつきのいい場所に設置でき、効果が出るまでの時間が短くなる可能性も高いです。
DIYのシロアリ駆除で難しいこと
DIYでベイト工法を施工する場合と、シロアリ駆除業者に依頼する場合とで比較した場合、専門知識がないために対応が難しいことがあります。代表的な例をいくつか解説します。
シロアリ被害の正確な調査
シロアリ駆除業者は専門的な知識や長年の駆除経験をベースに、シロアリ被害の検査をおこないます。経験の浅い人では、正確な現状把握をすることは難しいでしょう。
たとえばシロアリ駆除業者は、柱がどれほど被害にあっているのかを確認するために、柱を軽く指でノックして音を確認する「打診」と呼ばれる方法を使います。
経験がないと、音だけで被害状況を推察することはできません。
他にも、シロアリ駆除業者は専門的な知識やノウハウにもとづいて調査をおこない、「生息するシロアリの種類」「巣のおおよその大きさ」「木材被害の深刻度」などを特定します。
効果的な駆除方法の選定
シロアリ駆除業者は調査の結果にもとづいて「どの駆除方法が最適か」「どれくらいの薬剤量が適切か」などを計算します。
同じベイト工法でも状況次第で、容器を埋める場所やベイト剤の最適量が変わります。
調査と同様、正確な判断を下すには、専門的な知識や経験が必要であり、シロアリ駆除業者でない方にとっては難しいでしょう。
土壌への穴あけなど専門的な作業
ベイト工法は、効果を最大限に高めるためには一定間隔で土中に容器を埋める必要があり、硬い土層やコンクリート層の場合は穴をあけて容器を埋めます。
駆除業者は専門の器具を使って、容器を埋めるのに最低限のサイズの穴をくり抜きますが、道具なしだと穴を空けるのは困難です。
また、間違って大事な基礎部分や配管を傷つけてしまう可能性もあります。穴を空ける作業が必要な場合は、プロに任せた方が安心です。
早期依頼で被害を抑える
そもそもベイト工法は、効果が出るまでに数ヶ月から半年かかる施工方法であり、失敗がわかるのも数ヶ月先です。
仮にイエシロアリによる被害を半年間放置した場合、約12kgの木材が食べられる計算になり、これは住宅に用いられるスギの柱(10cm角、長さ3m)1本半ぶんに相当します。
食べられた柱のリフォームや、場合によっては建て替えまで必要になると考えると、効果があるかどうかわからない方法を長期間続けるのは危険です。
シロアリらしき虫を発見した場合はDIYを検討する前に、まずはシロアリ駆除業者が実施する無料診断を試してみるとよいでしょう。
リフォームや建て替えまで必要になる可能性を考えると、最初から駆除業者に依頼をした方が、結果としてお金の節約になるケースが多く見受けられます。
ベイト工法Q&A
基礎断熱の家でも施工できる?
可能です。ベイト工法は床下への薬剤散布が不要なため、床下にスペースのない家でも施工可能です。
ベイト工法の施工中に家の中でシロアリを見かけました、なぜでしょうか?
ベイト工法は即効性が低く、施工してすぐはまだシロアリを駆除しきれず、家の中にシロアリの侵入を許してしまう可能性があります。
施工して半年以上経つにもかかわらずシロアリが出現する場合は、シロアリがベイト剤を食べていない可能性があります。駆除業者に相談してみてください。
DIYの場合は、ベイト剤の位置を変えたり、ベイト剤を変えたりして、さらに1〜2ヶ月様子を見ましょう。
まとめ
ベイト工法は建物周辺のシロアリを巣ごと根絶できる駆除方法です。ベイト剤は簡単に手に入るのでDIYを検討する人も多いでしょう。
しかし、効果的な施工のためには専門知識や経験、場合によっては専門的な道具が必要です。
自分でベイト剤を設置したものの、実は効果がないまま時間が経過していたという場合には、シロアリ被害を広げてしまう可能性もあります。
リフォームや建て替えなど最悪の事態を防ぐためにも、家の周りでシロアリを見かけた場合、まずはシロアリ駆除業者に無料の現地調査を依頼しましょう。
シロアリ被害の状況や駆除費用を確認したうえで、自分にとって最適な駆除方法をご検討ください。
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